
ソメスサドルの挑戦
三浦 暁子(著)
英訳者:清涼院 流水
表紙と本文写真: 村田 利之
表紙デザイン: The BBB
発売日:2025/11/23
内容紹介
かつて日本有数の炭鉱町として繁栄を極めた北海道の歌志内(うたしない)は、石炭産業の衰退とともに町が廃れ始めていた。復興のためにさまざまなアイディアが出され、人びとは馬具づくりを模索。そうして、日本が最初の東京オリンピック開催で沸き立っていた1964年、ソメスサドルの前身であるオリエントレザー株式会社が創設された。
当時は戦後に実施された1ドル360円の固定為替相場制の政策が続いていた時代で、オリエントレザーは、その恩恵により輸出から大きな利益を得ていた。一時は工場が足りなくなるほど事業は拡大。しかし、1971年のニクソン・ショック、1973年のオイル・ショックの影響で状況は一変し、債務超過の窮地に陥る。
為替の変動により輸出で利益を出せなくなったオリエントレザーは、国内向けの革製品の開発に舵を切った。馬具だけでは会社を存続させられないので、革製品ならなんでもつくり、その丁寧な仕事ぶりから徐々に評価と信頼が高まる。確かな実績を地道に積み重ねたオリエントレザーは、1985年には新たに自社ブランド「ソメス」を立ち上げ、社名を「ソメスサドル」に変更した。
安易に大量生産に走ることなく、革職人の手づくりにこだわるソメスサドルの高い品質は、やがて、数々の賞を受ける。また、2005年に京都迎賓館が落成した際には宮内庁から革製品を依頼され、2008年7月に北海道でおこなわれた洞爺湖(とうやこ)サミットでは、参加する首脳たちへの記念の品としてソメスサドルの鞄が選ばれるまでに。
その後も2008年のリーマン・ショックによる金融危機など幾度もの荒波を乗り越えたソメスサドルは、2019年には令和天皇即位の際に使用される馬車具の製作を任された。そして、2021年に2度目の東京オリンピックが開催された2か月後、フランスのパリで開催された世界屈指の競馬レース「凱旋門賞」、新型コロナ・パンデミックの渦中におこなわれた100回目の記念すべきそのレースで勝利の栄冠に輝いた騎手が誇らしげに掲げたのは、ソメスサドルの鞍だった。
日本で唯一の馬具メーカー「ソメスサドル」の職人たちは、その高い技能と誠実な仕事と静かに燃える情熱で、60年以上にも及ぶ激動の時代を、いくつも乗り越えた。ノンフィクション作家・三浦暁子氏が執念の取材に10年以上の歳月をかけて見事に描ききった、必ずや読む人の胸を熱くさせる、奇跡の物語。
(本書の日本語版は2023年に河出書房新社から出版されました)
The BBBでの作品一覧
-
ソメスサドルの挑戦
2025/11/23
スポンサーリンク

